いつも、ずっと。
理性と本能がせめぎ合う。

自分の信念を貫くのか。

このまま欲望のままに、明日美を俺のものにしてしまうのか。

誰にも言うことなんて出来ないけど、本音をさらけ出してもいいなら……抱きたい。

俺の童貞なんてかなぐり捨て、明日美の処女を奪ってしまいたい。

「いや、やっぱり…………だめだ」

どんなに俺が今すぐに明日美を抱いてしまいたくても、例え明日美がそれを望んでるとしても。

やっぱり無理だ。

俺は明日美の純潔を守り抜くと決めたんだから。

「友也っ!!」

急に明日美の声が耳に飛び込んできてハッとした。

「…………あ、すみ?」

ものすごく心配そうに俺の顔を見つめている明日美と目が合った。

ホッとして全身の力が抜けるような気がした、その途端……。

吐き気が込み上げてきた。

「明日美…………気持ち悪ぃ」

ヤバい、どうしよう。

早くなんとかしたいけど、体が言うことを聞かない。

明日美に助けを求めたつもりだったけど、意味が分からないとでもいうような顔をしている。

伝わってないのか!

「ごめん明日美……吐きそう」

「友也、ここじゃダメ!急いでトイレ行こ!」


バチが当たったんだ。

本能に負けそうになったから。

明日美に連れられトイレでしこたま吐いたあと、言われるがままに洗面所で口を濯ぎ、部屋で寝る準備をさせられた。

「明日美ごめん、マジで。悪かったごめんな」

酔っぱらってしまってごめん。

せっかくの料理を吐いてしまってごめん。

期待に応えられなくてごめん。

いろんな意味で……ごめん。

「だけん、もうよかって。気にしとらんけん早よう寝らんね。あぁ私がおったら寝られんとかな。そんならもう帰るし」

えっ、帰るって?

そうだよな、俺が寝てしまえば何もすることないし。

普通、帰るよな。

だけど……。

「もし明日美が嫌じゃなかとなら、もう少しそばにおって欲しかけど……」

さっきみたいに取り乱したりしないけど、今はまだ帰らないでほしい。

「分かった。じゃあ友也が眠るとば見届けたら帰るね…………」

良かった。

安心したせいか、急激に眠気が襲ってきた。

この日はかなり危険を犯したけど、なんとか理性を保つことができた。

俺はこの先も信念を貫き通すことができるのだろうか。

明日美に求婚出来る日はまだまだ遠い。


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