いつも、ずっと。
それは、約一ヶ月前。

中学の時の部活の先輩、村井さんからメールで呼び出され、居酒屋へ行ったときのこと。

先輩と一緒にいたのが瀬名だった。

「おお、来たか御子柴。こちらは俺の会社の取引先の……」

「瀬名圭司、と言います。初めまして、じゃなか……俺のこと知ってるよな?多分」

ああ、知ってるさ。

でもなんで呼び出されたんだ俺。

しかも村井先輩はさっさと帰ってしまうし。

「なんのつもり?まさか明日美のこと?」

それしか思い付かない。

警戒心を隠さない俺に苦笑いして瀬名が言った。

「生田の彼氏って本当やったとばいな。村井さんとテニスの話しよったら御子柴と同じ中学やったって聞いたけん。ダメ元で呼んでくださいって頼んだっさ。実は、てっちゃんのことで……」

てっちゃん?

一体誰だと思ったら、田代先輩のことだった。

「ああ、先輩から聞いたぞ。お前、先輩の彼女に手ぇ出したらしかな。信じられん」

「違う!てっちゃんは誤解しとる。俺はてっちゃんのこと裏切ったわけじゃなか。もう諦めとったけど、なんとか誤解ば解きたかと思うて」

誤解?

まあ、話だけは聞いてやってもいいけど。

俺は田代先輩から、瀬名が先輩の彼女だった『唯ちゃん』を奪ったと聞いていた。

先輩にとって瀬名は部活の後輩である前に大事な親友だった。

その大事な親友に裏切られたのがかなりショックだったらしい。

『男の友情なんて脆いな。女が絡むと簡単に崩れる』なんて言っていたのを思い出す。

中学生で色恋沙汰なんてどうかしてる、なんて思わなくもなかったけど……。

俺だってもし明日美絡みでトラブったとしたら、正気ではいられないだろう。

「俺と唯子が付き合い始めたのは、唯子が中学に入ってすぐ。俺が部活しててあまり会えないから、唯子がテニス部のマネージャーをしたいと言い出したんだ。俺たちが付き合ってるのは誰にも秘密にしてたから、部活でも表面上は部員とマネージャーの関係を装っていた。だけど秘密にしてたせいで……」

「田代先輩が彼女に告ったのか?」

「ああ。唯子が二股かけてたなんて知らなかったし、俺が唯子に裏切られたんだ。だけど俺たちの関係を知らなかったてっちゃんは、俺が後からちょっかい出してきたと思ったんだろう」

それじゃ、逆じゃないか。

先輩が後から彼女にちょっかい出した。

嘘だろ………。

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