いつも、ずっと。
「田代先輩には言わなかったのか?」

「本当の事?言いたかったけど言えんかった。だっててっちゃんからはずっと拒絶されて接触できんかったし。てっちゃんが俺の事『裏切者』呼ばわりして、他の先輩からもシカトされとったし」

その後、彼女とは自然消滅。

瀬名が引っ越して、先輩とは音信不通。

先輩から聞いてた話とまったく違う真実を知って、瀬名に同情の気持ちが芽生えてしまった。

「で、俺にどうせろと?今聞いた話ば先輩に聞かせてやればよかと?」

「いや、そうじゃなくて。出来たら自分で直接話したかとけど、連絡先知らんし。俺が連絡しても、うてあってくれんやろ。だけん、てっちゃんと会えるようにセッティングしてくれんか?」

セッティング?

それができるのなら一番いいんだろうけど。

「でも先輩なかなか東京から帰って来んぞ。俺だって年に一回会うか会わんかくらいやし。だけんいつセッティングできるか約束できんぞ」

「分かった。てっちゃんが長崎に帰って来るときには連絡くれよ。携帯の番号は?教えてくれんとやったら、生田から聞き出して」

させるか!

速攻でメモ書きしてやった。



そんな訳で、瀬名と携帯の番号を交換したが、まだ先輩が帰ってこないためセッティングはできていない。

ダブルデートの青柳さんのペアが瀬名?

青柳さんは田代先輩と瀬名が絶縁関係にあることを知らないんだろう。

そもそも二人が昔は親友だったという事すら知らないはずだ。

明日美だってそうだろうし。

青柳さんが本気じゃないとしても、まずいんじゃないか?

「でも私、本当は未来には田代先輩とずっと付き合ってほしかような気のするとけどね」

俺だって同感だ。

あの二人は今まで遠距離でも続いてきたんだし、先輩も仕事に一区切りつけるため必死だと言っていたのを俺は知っている。

きっと青柳さんに結婚を申し込むために頑張っているんだと思う。

「そんなら別にダブルデートとかせんでもよかっじゃ?」

いくら親友の青柳さんからの頼みだからと言って。

それとも何か?明日美にとってもメリットがあるのか?

しかもイケメンイケメンって。

「その『瀬名』ってやつがイケメンかどうか俺の知ったこっちゃなかけど、絶対そいつより田代先輩の方が男前って思うぞ」

だから青柳さんが瀬名で満足するわけないだろ。

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