いつも、ずっと。
「そ、そう?確かに田代先輩もイケメンやもんね。でも私からしたらそがん大差ないような……。未来は面食いやけんイケメンじゃなからんばダメっさ多分」

「明日美もそうか。お前も男はイケメンの方がよかとか思っとるとやろ」

俺は自分がイケメンではないことくらい自覚してる。

だけど、明日美が俺の目の前で他の男をイケメンイケメンと言うのは正直言っていい気分ではない。

「なんでそがんこと言うと?未来は面食いやけんイケメンの方が喜ぶやろうって思うただけよ。私がいつイケメンが好きとか言うたとよ。私、別に面食いとかじゃなかし」

「へぇ、じゃあなにか?明日美は俺がイケメンじゃなくて良かったって言うとか。面食いじゃなくて俺がイケメンじゃなかけんが、俺と付き合いよるってこと?ふーんそうか、よう分かった」

どうしたんだ、俺。

さっきからどうもおかしい。

田代先輩や瀬名と比べられてるような気がしてならない。

あの二人からして俺が男として劣っているとでも言われたような気分だ。

これじゃまるで、拗ねてるみたいじゃないか。

ガキじゃあるまいし。

明日美もこんな俺の態度に呆れているだろう。

最悪だ。

「確かに私、面食いじゃなかって言うたけど。友也がイケメンじゃなかとは一言も……言うとらんけど」

間があった。

言うとらんけど思っとる、てとこか。

だめだ、このままじゃどんどん卑屈になっていく。

そんな俺を明日美が好きでいてくれる訳がないのに。

いい加減、気持ちを切り替えなければ……。

情けない自分を律しようと思い直したその時だった。

「ずっと前に私が友也に言うたこと忘れたと?友也は私の中で誰にも負けんくらい、よか男って思うとるって……。瀬名くんとか田代先輩とかばイケメンって思うても、私にはどーでもよかことばい。友也以外の男は眼中になかけん。イケメンかどうかじゃなか。友也しか見とらんってことさ」

…………え?

俺は、バカだな。

本当に明日美のことをそばで見てきたのか?

明日美にこんなことを言わせるまで気づかないなんて。

明日美にとって『イケメン』って言葉は、誉め言葉じゃなかった。

『友也以外の男は眼中になか』

『友也しか見とらん』

俺にとってこれ以上の誉め言葉、ないだろ。

無意識のうちに明日美の手を引き、俺の腕の中に閉じ込めていた。

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