いつも、ずっと。
「あっ、はぁっ……明日美ぃ……もっと…………」

気持ちいい。

絡み合う舌がどっちのものなのか分からないくらいに、交じり合って溶けていくようだ。

身も心も一体感に包まれ、このまま全て奪い尽くしたくなる。

…………このままじゃダメだ。

俺が、止まれなくなる。

俺だけじゃない、明日美も。

名残惜しい気持ちを振り切り、身を引き裂くような覚悟で、隙間もないくらいピッタリとくっついていた唇を一気に引き剥がした。

「……………………」

「…………ごめん。明日美、俺、まだ……。これ以上は…………」

そんなに責めるような目で俺を見ないで。

二人とも息が上がったまま、はあはあと荒い呼吸を繰り返している。

早く、落ち着かないと。

自分で引き剥がしたのに、心が疼いて疼いて……痛かった。

同じ痛みを明日美にも与えているのかと思うと、やりきれなさで息が苦しくなった。

「…………時期尚早?」

俺がいつだったか明日美に言った言葉。

「あ、いや、まあ……。これ以上は俺が暴走しそうで。自分ば抑える自信のなかっさ。いまこの場所で……マズかろ?」

そう、全ては俺のせい。

俺が悪い。


「そんで、そのダブルデートとやらはいつ開催されると?俺も都合のつけらるっかまだ分からんけど、なるべく予定ばあけるごとするけん」

無理矢理だけど、現実に立ち返る。

こうでもしなきゃ、俺も明日美も可笑しくなってしまいそうで。

「うん……。未来ともまた相談せんばし、瀬名くんを誘ってみてからの話やけん。友也にも改めて報告するね」

明日美も俺の思いを汲み取ってくれたようだ。

「じゃ、私もう帰るね。おやすみ!」

そうだな、今日はもう帰った方がいい。

俺も一人になって頭を冷やしたい。

玄関まで見送りに出て、ぎこちなさを誤魔化すように言葉をかけた。

「俺もさ、その……明日美の同期の瀬名?ってやつと会ってみたかったけん。予定の決まったらすぐ教えろよな」

「うん、分かった。それじゃ、おやすみ」

言葉少なに帰っていった明日美。

いくら隣に住んでいるとはいえ、こうやって別れる瞬間の寂しさは消えることはない。

俺は、まだいろんな試練を乗り越えなければいけないんだろう。

明日美と一緒に人生を歩んでいきたいと思い始めて十五年。

あと少しの辛抱だ。

なんとしても、耐えてみせる。

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