いつも、ずっと。
「稲佐山までの移動の時は?お前が未来ちゃんば乗せて、俺が生田ば乗せればよかっじゃ?そしたらゆっくり話できるやろ」

「そいこそ意味の分からんやろ!ただでさえ今日は明日美と二人きりになれる時間のなかとに、明日美がお前と二人きりになるとか勘弁してくれよ」

確かに、瀬名の言う通りにすれば青柳さんと話ができるけど。

稲佐山でなんとか不自然にならないようにチャンスを作るから。

「ふうん……。さっき、映画観ながらいちゃつきよったくせに。まだ足りんとか。生田は会社でも上司とか先輩とかに可愛がられとるけん、気ぃつけた方がよかぞ。知らんやろうけど人気あるけんな」

やっぱな。

明日美がモテることくらい俺が一番知ってる。

「俺が一番心配かとはお前さ。間違っても明日美に変な気ぃ起こしてくれるなよ。そうさ、俺の目が届かん分お前が代わりに目ば光らせろ。なんかあれば俺に知らせてくれよな」

「なんで俺が!」

「嫌ならよかぞ。そん代わり田代先輩とのセッティングもどうなるか分からんけどな」

やっぱ、持ちつ持たれつだろ?

「ちぇ、しょんなかな……あ、来たぞ」

明日美たちが戻ってきた。


「さっき瀬名くんと二人で待っとるときどうやった?なんば話しよったと?」

稲佐山までの短いドライブ中に明日美が聞いてきた。

俺と瀬名が何を話していたのか気になってるらしい。

「ん?明日美のことばちょっとな。会社で俺の知らん誰かからちょっかい出されよらんかとか。ついでに瀬名にも念のため忠告しとったけど」

嘘じゃない。

そういう話をしたのも事実だ。

「それで、瀬名くんはなんて言ってた?私のこと」

「明日美は誰に対しても優しかけん、上司や先輩からも可愛がられとるって。男女関係なくみんなから好かれとるらしかやっか。良かったな明日美。でもそのお前の優しさを勘違いする奴もおるかもしれんけん、気を付けろよ」

瀬名に『俺の代わりに目ば光らせとけ』なんて言ったことは内緒だけど。

本当は明日美が青柳さんと二人で何を話していたのかのも気になるけど。

青柳さんが瀬名のことをどう思ったのかとか。

青柳さんが何か企んでいそうじゃないかとか。

だけどやめた。

明日美には純粋に今日のダブルデートを楽しんでもらいたい。

こうしてみんなで遊ぶのも楽しいだろうから。

悩むのは俺だけで十分だ。

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