いつも、ずっと。
稲佐山で和やかなムードの中、桜の木の下で花見しながら昼食。

その後、頂上の展望台まで歩くことにした。

山頂までの道中にはミニ動物園があり、猿と鹿を見ることができたけど……。

餌をやることは禁じられていたから、大した面白味も感じられず。

「おーい、そろそろ行こうで。そがん猿のケンカば見ときたかとなら置いて行くぞー」

猿を見ながら騒いでいる青柳さんと瀬名に声をかける。

「友也、先に行っとこうか?二人もすぐ追いついてくるやろ。展望台に早う行こう!!」

「そうすっか。じゃ、お先にー!行くぞ明日美」

明日美の手を引き、二人だけで頂上の展望台を目指した。

明日美の手の温もりを感じながら、どうやったら自然に青柳さんと二人で話が出来るだろうかと考えていた。

展望台から長崎の町並みを見下ろしながら、思い出話に夢中になってしまった。

明日美と一緒だと時間を忘れそうになる。

ずっとこうして二人だけでいられたらな。

だけど今日はそういう訳にもいかない。

いいアイデアが浮かばずに焦っているところに、思わぬところからチャンスがやって来た。

「明日美、明日美ちょっと来て!」

「ん、なに未来。あれ、そういえば瀬名くんはどこ行ったと?」

俺の元を離れ青柳さんの方に行ってしまう明日美。

二人でこそこそと何か相談でもしているのだろうか。

それにしても瀬名の姿が見えないのが気になる。

まさか、わざとか?

明日美と青柳さんに近づいて、さりげなく聞き耳を立ててみた。

「……じゃ私も先に下りるね。友也には言わん方がよかかな」

先に下りる?

俺を置いて行くつもりか。

「俺には何て?明日美」

「うわっ!!ビックリしたー!!」

まったく俺の気配に気づいてなかったらしい明日美が飛び上がって驚いた。

「青柳さん、瀬名の姿の見えんけど。あいつ青柳さんば放ったらかしにしてどこに消えたと?」

「ああ、違うと。ちょっとタバコ吸いとうなったんじゃなかかな。先に下りとくって、ついさっき。だけんね、みんなの飲み物ば買っとってって頼んだと」

ふーん。

俺に切っ掛けを与えてくれたつもりか。

じゃあ、明日美が先に下りるって言ったのは一体……。

「飲み物って、何ば買うてくれるつもりやろか。瀬名くんに任せると心配やけん私も行ってくる!」

明日美、お前……。

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