いつも、ずっと。
一人、瀬名の元に向かおうとする明日美を引き留めたい思いに駆られる。

でも、今こそ絶好のチャンス。

なんか上手く行きすぎてる感があるけど、そんなことを気にしてる場合ではない。

だけど……。

「おい、明日美!」

ただそのまま行かせたくなくて、声をかけずにはいられなかった。

「……あのさ、俺…………」

何を言うつもりなんだ。

これから青柳さんと二人きりになろうとしてるなんて、言えるわけもない。

だから瀬名のところに行くななんて言えないのに。

「俺、コーラで」

本当にコーラが飲みたかったじゃない。

何か言わないといけないと思ったらつい、出てしまっただけ。

微妙な空気を残したまま走り去ってしまった明日美の背中を見送っていると、青柳さんが俺に向かって言った。

「御子柴くん、ちょっと二人だけで話ばしたかとけど。……よか?」

まさに俺が言いたかったことだ。

青柳さんの方から誘われるなんて思ってもみなかったけど、願ったり叶ったりな展開。

「よかけど。俺も実は青柳さんに話したかことのあるし。どこで?」

「できたら、御子柴くんの車で。明日美たちも下りたし、行こうか」



俺の車の中で、青柳さんと二人きり。

この状況は正直言ってつらい。

早く終わらせるようにしたい。

「で、話ってなん?」

「御子柴くんからお先にどうぞ」

どっちから先でもいい。

それなら遠慮なく。

「今日のこと田代先輩に言うかもしれんて本気?先輩には黙っとった方がよかと思うけど」

だってそうだろ?

遠距離恋愛のことはよく分からないけど、他の男と会ったなんて言ったらまずいに決まってる。

しかも相手は瀬名だし。

「私ね、テツくんのことば信じてずっと待っとるとけど……。今の状態がいつまで続くとかなって不安になってきたと。テツくんと別れるつもりなかけど、テツくん以外にも男の人の存在ばちらつかせるともアリかなって思ったりしてね」

『信じて待っとる』ってのは、結婚のことだろう。

でもこんなやり方はどうなんだ?

「そがんことなら、俺も明日美もなんか出来ることのあれば協力すっとに。でも瀬名ば巻き込むとはやめてくれんか?田代先輩に瀬名と会ったことだけは言わんで。頼むけん」

「なんで……?テツくん、瀬名くんのこと知っとると?」

言えないよな……。

先輩が瀬名を恨んでるなんて。

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