いつも、ずっと。
「友也!あんた知っとったと?明日美ちゃんが、インフルエンザって!?」



ダブルデートの翌日。

仕事から帰ってきた途端、母ちゃんが捲し立てるように俺に食って掛かってきた。



「……インフル!?明日美が?」



昨日、稲佐山で別れも告げずにお互い別々に帰ってきた。

その後は俺から明日美に連絡することは禁じられている。

だから、知るはずがない。



「友也、一緒におったとやろ?今日生田さんから聞いたけど、明日美ちゃん昨日の雨でずぶ濡れになって帰ってきたとってよ!それで熱出して病院に行ったらインフルやったとって。一緒やったとにあんたは全然濡れてもおらんし、なんで明日美ちゃんだけ……」



明日美、やっぱり昨日は雨に濡れたんだな。

しかもただの風邪じゃなくインフルとは。

今頃部屋で苦しんでいるんだろうな。

俺が代われるものなら代わってやりたいけど……。

何もしてやれない今の状況が歯がゆくてたまらない。



「ちょっと友也!お母さんの話聞いとると?どういうことかきちんと説明……」



ブブブブブブ

ブブブブブブ



間が悪いというか何というか。

俺の携帯のバイブが鳴り響いた。

まさか、明日美?



『おいっ御子柴!貴様てめえよくも……この野郎……』



明日美な訳ないか。

今頃インフルで苦しんでいるのなら電話なんてかけることも出来ず床に臥せっているに違いないのに。



通話ボタンを押すなり、怒りをぶちまけてきたのは、田代先輩だ。

きっと青柳さんから聞いたんだろう。

俺と付き合うことにしたと。



「もしもし。どうしたんですか先輩。なんかあったとですか?」



『なんかってお前!未来と付き合うってどがんつもりか!?本当は今すぐにでも長崎に帰りたかけど、そういうわけにもいかんし。今度の土曜日に無理矢理時間作って帰るけんな!電話じゃ埒の明かんけん。逃げるなよ!!』



一方的に捲し立て、俺に反論の余地を与えずに切ってしまった。

早々に電話を切ったのは、埒が明かないというだけではないだろう。

いま抱えている仕事が一段落つくまでは気が抜けないようだし。

そして土曜日に時間を作るつもりでいるなら、その前にある程度やれることを片付けておく必要があるんだろうし。



でも田代先輩が帰ってくるのなら、アイツにも知らせておかないと。

土曜日は先輩や俺だけでなく、瀬名にとっても勝負だ。



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