いつも、ずっと。
そして決戦の土曜日。



田代先輩からこっちに着いたと連絡が来たのは夜の九時過ぎ。

駅に呼び出され、アミュプラザ五階の"Cafe & Bar ウミノ"で待ち合わせた。



もちろん瀬名にも連絡済みだ。

まずは俺が先輩と話をして、頃合いを見計らって瀬名をその場に呼ぶことにした。



『一番奥のテーブルで待ってる』



メールでの知らせ通り、人目につきにくい奥の席で一人座っている先輩の姿が見えた。



「お待たせしました」



「ああ、お疲れ。まあ座れよ」



この前の電話とは打って変わって落ち着いた様子の田代先輩にちょっと面食らった。

会うなり怒鳴られるのかと思ってたから、ちょっと拍子抜けだ。



「どういう訳か説明してくれんか?今日はできるだけ冷静に話ば聞こうと思うとる。ま、話次第やけどな」



そっか、数日間を経て心を落ち着けたのかと思ったけど。

無理矢理平静を装っているんだな。

先輩が最後まで冷静でいられるのかどうかは俺次第ってことか。



「言うときますけど、こがんことになっとるとは田代先輩のせいですけんね」



先輩が青柳さんのことをちゃんとケアしてないから、こっちはとばっちりだ。



「なんで青柳さんが俺と付き合うとか言い出したとか分かるでしょ?もう何年も遠距離恋愛で、いい加減痺れ切らしたとですよ。先輩、東京で仕事忙しかとかもしれませんけど、青柳さんに早よう結婚ば申し込んだらどがんですか?」



俺の話を黙って聞いていた先輩の顔が苛立ちを見せた。

『そんなこと言われなくても分かってる』とでも言いたげな表情だ。



「あのさ、御子柴。未来と付き合うってことは、生田さんとは別れたってこと?未来はお前にとって俺の彼女ってだけじゃなかろ。自分の彼女の親友ぞ。一体なん考えとっとか!」



ああ、その通りだよ。

だから俺が青柳さんと付き合うなんて有り得んやろ。

先輩、まさか本気にしとらんやろうな?

ちょっとは俺のこと信用してほしいところだけど、青柳さんがどんな風に伝えたのか分からないしな。

とりあえず詳しく説明するしかない。

俺は田代先輩にまで嘘をつくつもりはない。

契約を交わしてしまった以上、明日美にはまだ本当のことを言うわけにはいかないが、先輩には真実を告げる。

だって、田代先輩のことは契約には含まれていないからな。



「俺が青柳さんと付き合うって本気で信じたんですか」



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