いつも、ずっと。
「そがん余裕かましとってよかとか?生田さん可愛かしモテるやろ絶対。お前がグズグズしとるうちに他の男に取られても知らんけんな!」

確かに明日美は可愛いし、性格も素直だし、モテる方だ。

中学でも人気があったのは知ってるけど、あらぬ噂をそれとなく流したりして、なるべく男を寄せ付けないように努力してきた。

今は女子高に通っているから、そこまで心配してはいない。

「明日美は変な男に引っ掛かったりはしませんよ。それに約束もあるし」

約束とは、俺が明日美に誓ったように、明日美も俺に誓ってくれたんだ。

『私も高校生のうちは彼氏は作らんよ』

高校を卒業したら、その時はその時。

その時の状況に応じて、最善策をまた考えるだけだ。

「変な男には引っ掛からない、か。大した自信だな。じゃあ……俺だったらどう?もしこのまま未来ちゃんが俺の彼女になってくれんとなら、未来ちゃんのことは諦めて明日美ちゃんにアタックしようかな。御子柴の彼女じゃないんだったらいいよな、俺が明日美ちゃんを彼女にしても」

……なんだって!?

「先輩が好きなのは青柳さんでしょ。冗談はやめてください。それに……。明日美は先輩のこと、眼中にないですよ」

いくら田代先輩がイケメンでもな。

それくらいは俺にも分かる。

ずっとそばで明日美のことを見てきたんだから。

「確かに。でもまだチャンスはあるやろ?この先どうなるかなんて誰にも分からんとやし。俺の努力次第では明日美ちゃんだって……」

「あーっもう!!いくら先輩がイケメンやからって、そいはなかですよ。そんがん言うなら、付き合いますよ明日美と。だけん金輪際、明日美のことを親しげに『明日美ちゃん』って呼ばんでくださいよ!」

……分かっている。

田代先輩が本気で明日美を口説こうとしている訳じゃないってことくらい。

きっと俺の態度が煮え切らないと思っているのだろう。

本当は誰がなんと言おうと自分の考えを曲げるつもりはなかったけど、気が変わった。

ここはひとつ先輩を立てて、挑発に乗ってやるとしよう。

ただし、そのまんま乗っかるつもりはない。

あくまでも、フリだ。

明日美に俺の彼女になったフリをしてもらうことにしよう。

つまり本物ではなく、偽りの恋人って訳だ。

まず明日美に相談しないといけないけど。

さて、どうすっかな……。

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