いつも、ずっと。
だけど契約のことを明日美に言うわけにはいかない。

伏せていた顔を上げたけど、まだ明日美の方を向くことは出来ない。

まだ嘘をつかないといけないから。



「そいは……その……インフルやったろ?明日美。母ちゃんから聞いて、治るまでは会いに行くなって言われとった。本当は俺も明日美から連絡来るかなって思ったけど、具合悪かったとなら仕方なかもんな」



「本当にそれだけ?インフルだけが理由なの?」



さすがに納得してはくれないか。

こんな子ども騙しみたいな説明じゃ無理だろうとは思ったけど。

どうせ嘘つくことに変わりないんだから、中途半端はやめよう。

明日美が未練を残さず、俺に愛想を尽かすように。



俺の明日美への想いを悟られないように、明日美の方へ向き直り冷ややかな視線を投げた。



「鋭かな明日美は。確かにそれだけじゃなかよ。インフルのせいだけにしとくつもりやったけど、そがん言わせたかとなら言うよ。面倒な説明は青柳さんに任せようと思ったっさ。実際そうなったろ?な、俺から連絡せんで良かった」



半分は嘘だけど、半分は本音。

結局嫌われる覚悟なんて出来てない。



「そう……。思い通りになって良かったね。私たち、本当に付き合いよった訳じゃなかけんね。契約解除するきっかけの出来たけん友也は満足……?どうせなら私は未来よりも友也の口から聞きたかったけどね」



「いや、あのさ……」



満足な訳ないだろ!

俺から明日美には連絡をしないという約束だったから、というのは都合のいい言い訳に過ぎない。

明日美からの連絡を待ってるフリして、本当はこうして明日美と向き合うのが怖かったんだ。

自分の口から明日美に契約解除してくれなんて、言いたくなかった。

明日美に散々嘘ついて、理不尽に傷つけて。

今更何が言えるのだろうか。



「ああ未来がね、友也と付き合うごとなったけんって、私と友也に会うなとは言わんって。そうよね私たち隣に住んどるとやし、それに親友やったら会わんともおかしかよね。私にとっては、未来も友也も親友やけん…………」



結局行き着くところはそこか。

親友なんて聞こえはいいかも知れないが、今の明日美と俺にとってはどんな意味があるのだろう。

中学生時代とは様変わりしてしまった二人の関係を、ただの親友という言葉で片付けられるはずなんてないのに。



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