いつも、ずっと。
「おい、俺が送ったSMS見たか?なんで返事寄越さないんだ」



瀬名から電話がかかってきたのは多分初めてだ。

明日美の様子を聞き出そうと何回かメッセージを送ったのにシカトしやがって。



『俺、入院してるんだ。昨日まで意識失ってたし。ところで御子柴、お前生田から伝言ちゃんと聞いたか?』



「入院……?伝言って一体何のことだ」



先月、福岡出張からの帰り道で交通事故にあったらしい。

昨日まで意識不明だったなんてとても信じられないけど。



『俺の事故のことも知らんかったってことは、やっぱり嘘やったとな。生田のやつ……。あ、そしたらあの事も知らんとやろ?とうとう生田から見放されたかお前も』



「なんば言いよっとか。"あの事"って出張のこと?明日から行くって佐世保に。だけん明日俺さ」



『はあっ!?佐世保って!』



俺の言葉を遮って、急に大声出した瀬名。

さっきまで声を押さえぎみだったのは、もう消灯時間を過ぎてるからじゃなかったのか。

しまったと思ったのか、また声のトーンを下げて衝撃的な事実を告げてきた。



『誰からの情報か知らんけど、佐世保は違うぞ。本当は俺が……』




「もしかして、福岡か」



瀬名は福岡に出向する予定だったはず。

それが事故に遭い入院しているということは、代わりに明日美が福岡に行くことになったとしても不思議ではない。

どうして、佐世保なんて嘘ついた?

明日美は俺に福岡に行くことを知られたくないのか。



『その通り。だけんさ、お前も意地張っとらんで生田とちゃんと話し合えよ。お前らはお互い想い合っとるとやろ?そいとになんで』



「俺、明日美に『好き』って言うたことなかけど。明日美からも聞いたことなか」



ああ、俺は本当にどーかしてる。

明日美に嘘ついて騙してる罪悪感からか、こんなことを喋ってしまうなんて。



『なんだって!?意味の分からんとけど』



分かってもらおうなんて思ってないし。

俺と明日美の関係を他人にとやかく言われる筋合いはない。

だけど俺も明日美に会えないことでストレスを抱えてるし、ぶっちゃけたくなったのかも。



「俺が明日美に想いを告げるのは、結婚を申し込む時だって決めてるんだよ」



俺の人生プラン、青柳さんだけでなく瀬名にまで話してしまった。

まだ実現できていないというのに。

なにやってんだ俺。





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