いつも、ずっと。
「じゃあ今週末にでも帰ってきてくださいよ。明日美の出張は一週間くらいの予定らしかし」



あの明日美の言葉が本当だったらな。

電話が繋がらない以上、その真偽を確かめることはできない。

早く帰ってきてくれることを信じるしか……。



「分かった。仕事も一段落で、前より時間の都合はつけらるっけん大丈夫。未来の体調も気になるしまた土曜日に帰るつもりでおるし。東京でもやるべきことのあるけど、頑張らんばな。生まれてくる子どものためにも」



田代先輩も父親としての責任感が芽生えてきたようだ。

しかし今は長崎と東京で離れている二人。

これからどうするつもりなのか。



「結婚ってなったら今までみたいな遠距離では無理でしょう。どがんすっとですか?先輩はこっちに帰って来たかって言いよったですけど」



「そいはこれから決めんばいかん。とりあえず東京の両親に結婚の意思は伝えとるけど、仕事や会社のこととか相談せんばやろうし。子どもの生まれるとなったらボヤボヤしとられん。なあ、未来」



先輩の言葉にはにかんだ笑顔を見せて頷いた青柳さん。

もうこの二人は大丈夫だろう。

やっと振り回されずにすむ。




「そういえば、圭司に連絡つかんかったぞ。俺からの電話ば待っとるとか言うたくせに」



「瀬名は先月事故に遭ったらしかですよ。まだ入院中やけん電話には出られんかったとじゃなかですか」



先輩も知らなかったのか。

仕事が忙しく余裕はなかったんだろうけど。



「事故?入院ってどこの病院に」



「俺もそこまでは知らんし。昨日電話で聞いただけやし」



そうだ!

瀬名、アイツがいるじゃないか。

このまま明日美の携帯に電話が繋がらないとしても、会社の同僚である瀬名だったら連絡できるはず……。



「ねえ御子柴くん。もしかして『せな』って、あの瀬名くんのこと?」



青柳さんが俺に遠慮がちに聞いてきた。



「え?未来がなんで圭司のことば知って…………」



しまった!!

青柳さんと先輩が一緒にいる目の前で、瀬名の名前は禁句だった。

青柳さんが瀬名と付き合うフリをしようとするのは阻止したけど、先輩と瀬名の関係については秘密にしてたのに。



「あっ、そうか。青柳さんは明日美から瀬名のことば聞いて知っとったとやろ。明日美の同僚で同期で同級生やもんな。なっ、そうやろ青柳さん!」



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