いつも、ずっと。
「あっ、ええと?うん、明日美の仕事仲間なんだよね。明日美から聞いたと」



青柳さんは首を傾げながらも、俺の意図を汲んでくれたようだ。



「心配せんでも大丈夫ですよ。普通に元気な感じで話してましたから」



瀬名が事故で入院したせいで明日美が福岡に行かなければならなくなったのだろう。

その辺の話も詳しく聞かなければ。

俺から瀬名に電話したいとこだが、入院中ならいつかけたら大丈夫なんだろうか。

アイツから電話してくれればいいけど、それを期待して待つほど心に余裕はない。



「御子柴、今日は車で来たとか?良かったら俺と未来ば家まで送ってくれんか」



二人は約束の時間まで青柳さんの家にいて、ここまではバスで来たらしい。

田代先輩の実家は野母崎だから、結構距離がある。



「浜町なら車で行くつもりやったけど、ここなら近かけん歩いてきましたよ。車取ってきますけんちょっと待っとってください」



身重の青柳さんを長時間バスに乗せるのは忍びない。

バスが空いているとは限らないし、立ったままの移動はかなりの負担になるだろう。

今朝は貧血で倒れたらしいし。

こんな俺で役に立てるなら。




「どうしよう、なんか緊張してきた……」



「大丈夫、今日は俺も一緒におるし。叔父さんと叔母さんは俺の味方になってくれると思うし」



俺が運転する車の中で相談中の田代先輩と青柳さん。

これから二人で先輩の育ての親である叔父さん夫婦に挨拶をして、今後のことも話し合うらしい。



先輩は東京のご両親が経営する会社に就職してるから、今の生活の拠点は東京になる。

いま直ぐには無理でも、先では長崎に戻りたいという希望を捨てきれずにいるみたいだ。

ご両親からは反対されるだろうけど、なんとか説得したいから叔父さんたちに力を貸してほしいと頼むつもりでいるんだとか。



「未来は東京にしばらくおらんばごとなってもよか?仕事も一段落ついたとはいえ、まだ直ぐには東京から離れられんかもしれん。それでも俺と一緒に暮らしてくれるか?」



「もちろん、そのつもり。今まで離ればなれやったけん、その分もテツくんの側におりたか。あっでも!赤ちゃんは長崎で生みたかけど。里帰り出産してよかかな」



「俺もそれがよかと思う。俺もその時は仕事ば調整するけん、立ち会い出産…………」



俺の存在すっかり忘れてないか?






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