いつも、ずっと。
今度は明日美の方から、田代先輩と青柳さんだけに付き合ってるフリをしてもすぐに嘘だとバレるんじゃないかと指摘された。

さすが、いいとこを突いてくるな。

俺だって本当は嘘なんかつきたくない。

だけど今回の場合は仕方がない。

『フリ』だと認識するのは俺と明日美だけでいいし、周りには明日美が俺の彼女だと思ってもらっていた方が好都合だし。

明日美にとっても悪い話じゃないと思うけど。

「お互いの親だけには本当のことば言うけど、それ以外には俺たちが付き合いよることにする。つまり、世間公認の彼氏彼女ってことになるけど……よか?」

そう、世間公認。

俺が狙っているのはそれだ。

「わっ、私は構わんけど……。友也はよかと?私が友也の彼女だってみんなに思われても。い、いくら、偽者でも」

"偽者"……そうだ。

俺はそこをしっかり認識しておかなければいけない。

勘違いしないように……。

「嫌ならこがんこと明日美に言える訳なかろ?」

俺が彼女になって欲しいと思う女は、後にも先にも明日美しかいない。

だからここはひとつ、大人しく俺の彼女になってくれ。

俺の、偽りの彼女に。



良かった、明日美もやっと納得してくれたようだ。

「じゃあ後はお互いの親に事情ば話して……」

「ちょっと待って友也」

ん……なんだ、どうしたんだ明日美。

そんな切羽詰まったような顔して。

「私、お母さんたちには言いとうなか」

「言いとうなかって、なんば?」

明日美が親にも『フリ』だってことを言いたくないと言い出した。

親にも付き合ってることにしたいと。

「うちのお母さんの場合『付き合いよるフリ』とか言うた方が混乱するとじゃなかかなって思う。そこらへんば上手く言いくるめられるか自信なかし」

マジか!

でも確かに明日美から親に上手いこと説明せろって方が無理かもな。

「俺が一緒におばちゃんたちに言おうか?」

「ごっごめん、それはちょっと困る」

なんでだ。

俺から説明した方が上手くいきそうな気がするのに。

まさか明日美が親にまで嘘をつくことを選ぶなんて、想定外だ。

どうしたもんかな…………。

順調に事が運びそうだったのに、何か打開策はないか?

「うちの親に本当のことば言わんばとなら、私はこの話には乗れんけど?」

な、なんだって!?

ま、マズイ。

それは非常にマズイ。

明日美が受け入れてくれないと作戦が成り立たなくなる。

俺に従順な明日美がまさか反抗してくるとは思わなかった。

だけどそんな意外性も……好きだ。

「わ、分かった!俺の考えばっかり押し付けてごめん。明日美が乗ってくれんば俺も困るし、しょうがなか。でもうちの親には正直に言うけんな」

とりあえずお互いの両親には早目に報告するって事にしたけど、俺はまだ迷っていた。

明日美の両親に嘘をつくって、どうなんだ?

これから先の俺の人生プランに少なからず影響を及ぼすことにならないかと思うと心配になってくる。

周りのみんなには嘘をつくことにさほど罪悪感はないが、親に対しては後ろめたい事は出来るだけ避けたい。

自分の親と同様に、明日美の親も俺にとっては大事だから。

俺がそんなことを考えていると知るはずもない明日美が、今夜にでも報告すると言い出してさすがに焦る。

「え!?今夜って早すぎやろ!俺の心の準備が……」

「だって私明日は家におらんし」

よくよく聞いてみると、一年生恒例行事の宿泊会というのがあって、明日は外泊するらしい。

これは、チャンス到来か?

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