いつも、ずっと。
「明日美、ごめんけどやっぱり今夜話すとは待って。その合宿のあとにしてくれん?」

明日美が両親に報告するタイミングは俺が指示することにした。

明日の夜、明日美には内緒でおじちゃんとおばちゃんに会いに行こう。

ごめんな明日美。

やっぱり俺、明日美の親に嘘ついて彼氏のフリとかできそうにない。

「で、未来と田代先輩にはいつ言うと?明日、宿泊会で未来に会うけど。話すチャンスはあると思うよ」

「よかよ明日で。今日俺と会うこと青柳さんも知っとるとやろ。俺から『彼女になって』って言われたことにすればよか」

「そっか、そうだね。じゃあ未来には明日言うね。田代先輩には友也から言うやろ」

「ああ。明日部活で会うけん、ちゃんと言っとく」

先輩に言うのは大した問題じゃない。

問題なのは、明日美の両親に会って俺の口から説明する事だ。

そのためにはまず俺の両親に先に説明しとかないといけない。

明日美と付き合う『フリ』をすること。

明日美は両親に『フリ』ってことを言わないつもりでいる事。

だけど内緒で俺から真実を打ち明けるつもりでいる事。

なんか面倒くさいヤツだな、俺って。


翌日。

田代先輩には部活で会ったときに報告した。

「先輩のアドバイス通りに、明日美と付き合うことにしました」

「おっ、そうか!御子柴もやっと本気出したな。生田さんも喜んだやろ?良かったな!よっし俺ももう一回未来ちゃんにアタックせんば!」

喜んだ?

そうかな、明日美は喜んでくれたのかな。

付き合う『フリ』っていうのは契約みたいなものだ。

お互い『好き』と告げることもない。

こんな偽りの関係を明日美は受け入れてくれたけど……。

本当は待ってくれてるんだよな。

今はまだその期待には応えられない、ごめん。

だけど考えてみれば世間一般に"カレカノ"と認識されるのは俺にとって決して悪い事ではない。

俺たちが付き合っていると周りに知られるという事は、明日美の事を狙っている輩がいたとしても、シャットアウトできるって訳だ。

これで誰も俺の明日美に手出しが出来なくなる。

なんだ、そんなことならもっと早く付き合ってる『フリ』をしていたら良かったんじゃないか?

いやいや、中学生の俺じゃ付き合う『フリ』なんて考えも及ばなかっただろう。

やっと高校生だもんな。

俺もまだまだだ。



「俺、明日美と付き合うことになったけん」

夕食の場で俺の両親に報告した。

「あらま!あんたが告白したと?でも告白するとはまだ先って……」

「付き合うっていうても『フリ』ばい。だけんまだ告ってはおらん」

うちの親にはとっくに話してあるのだ。

俺の人生プランについて。

「でも『フリ』って、よう明日美ちゃんがOKしたな」

「俺らにも事情のあっとさ。けど、明日美は両親に『フリ』じゃなく本当に付き合っとることにしたかって。そいで父ちゃんも母ちゃんも『フリ』って言わんごと気ぃつけてくれんかな」

明日美に頼まれたからな。

俺もちゃんと釘さしとくって約束したし。

「じゃあ生田さんには嘘つくことになると?よかとかなぁ……」

その反応は想定内だ。

うちの両親と明日美の両親は仲が良いから、俺と明日美のことで嘘をつくことに罪悪感があるのだろう。

「分かっとる。明日美にはそれでよかってことにしたけど、俺も嘘ついたまま明日美の彼氏のフリとかしきらん。悪かけど、明日美には内緒できちんと説明しようと思うとる」

そう、今から。

明日美の両親に会って話す。

ごめん……明日美。

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