いつも、ずっと。
「インフルで明日美が苦しんどるとに何もしてやれんかったな。俺が代わってやりたかったけど、結局契約に縛られて身動き取れんかった。契約っていうとは、俺と青柳さんが付き合うフリばするっていうことけど、その中に俺からは明日美に連絡せんっていうとも含まれとった。青柳さんと俺はあくまで"付き合うフリ"やったけん、契約ば交わしてからも一切連絡取り合ったりしとらん。明日美へのカミングアウトは青柳さんに任せとったし。俺が明日美に何か言おうとして矛盾の出てきたら困るけんやろう。そいけん俺からメールも電話もできんかった。これが本当の理由」





「じゃあ、車に乗せてくれたとはなんで?私なんか無視してもよかったんじゃなかと」





あのファミレスの前に立っていた明日美に声をかけた時か。

電池を買い忘れたのは、明日美を見つけるためだったんだきっと。





「俺が明日美ば無視できるわけなか。雨降りよったし、傘持っとらんやったし。あれは俺から連絡したわけじゃなかけんセーフばい。それに一人でファミレスとか来るはずなかろ。てことは青柳さんから話ば聞いたとやろうなって推測できた。どの道俺は明日美ば放っておけんかった」



「ねえ友也。付き合うフリするとに未来と一切連絡取り合っとらんとか、本当?友也が大学生の時に未来が勤める塾でアルバイトしよったやろ。実はそん時から私の知らんところで繋がりのあったとか……」



は?

何を言い出すんだ。



「確かにアルバイト先は青柳さんと同じ職場やったけど。知らんわけじゃなかけん会えば雑談くらいするし、事務員とアルバイト講師として仕事上の会話くらいはあったさ。でも繋がりとか要らんし。青柳さんは田代先輩の彼女っていう認識しかなかった。携帯の番号もメールアドレスも知らんし」



「でも、あの時…………。ダブルデートの時、未来と車の中で二人きりでさ。なんかこう、いい感じになったっぽかったんじゃ」



いい感じ?

なにをどうしたらそうなるというんだ。

俺と明日美なら分かるけど、青柳さんとだなんて。



「なるわけなかやろ!なんでそがんこと……」



「私、見とったとけど。あの場面」



……………………?

あの場面って、なんだ?

不思議に思い首を傾げていると、明日美が怪訝な顔して俺を睨んできた。



「未来が友也に…………抱きついたやろ!?」



あ、あの場面か!!



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