いつも、ずっと。
「中学のテニス部の先輩に村井さんっておったろ?その村井さんと瀬名が仕事上の繋がりのあったみたいでさ。村井さんば通じて瀬名から呼び出されたとが一番最初やけん、ダブルデートの時はもう瀬名と繋がりのあったってことになる。ずっと黙っとって悪かった」



明日美は驚きと不信感が入り交じった表情で俺を見ている。

俺、どんだけ明日美に隠し事してきたんだろう。

今日はもうとことんさらけ出すつもりだけど。



「なんで瀬名くん、そがん回りくどいやり方で……。友也と会いたかったら私に頼むとが手っ取り早かとに」



「俺だってそう思うたけど。多分明日美には言いとうなかったとじゃ?田代先輩との昔の因縁とか。男同士のことは女には分からんこともあるけんな」



いまいち腑に落ちない様子だったけど、瀬名のことは今ははっきり言ってどうでもいい。

いや、どうでもよくなかった。



「さっきのあの指輪は?」



「あれは、瀬名くんが唯子さんのために買ったプレゼント。私が預かっていく予定やったけど、やっぱり自分で渡すって。そうよね、私もそれが良かと思うた。瀬名くんきっと唯子さんにプロポーズするつもりやろうし!」


瀬名の奴、エンゲージリングを選ぶために明日美を同行させたというのか。

一体何を考えているのか、まったくどうかしてる。

しかし俺との約束の直前にあの場所に居たということは、俺が早めにアミュプラザに来ることを予想してまさか……。

わざとあの場面を演出したとか。



しかし明日美がその指輪を預かるというのは、どういう理由で?



「唯子さんって、どこに()るとやったっけ……」



素朴な疑問が口をついて出ただけだけど、明日美はひどく焦ったように見えた。



「あっ!でっでも瀬名くんが自分で渡すことにしたみたいやし、私の出番はなかったばいね。プロポーズするための大事なプレゼント、直接渡さんばいけんよね!そうそう」

 


そうだよな。

プロポーズするならちゃんとそれなりの準備が必要。指輪とか、プロポーズの言葉とか。

さっきは勢いに任せて言ってしまいそうだったけど、明日美が止めてくれて良かったんだよな。

たくさんの人が行き交う駅前の路上で、しかも寝転がって抱き合ったまま。

あまりにも不自然だし、非常識極まりない。



指輪はまだ準備できていないが、もう先伸ばしにするつもりはない。



 



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