いつも、ずっと。
「私だって仕事してるんだし、貯金だって少しはあるよ。一緒に幸せになるんだったら、二人で頑張らんばいかんやろ。私ずっと仕事続けたかと思うし。あっ……」



明日美が突然何かを思い出したように、黙りこんだ。

イタズラが見つかった子どもみたいに肩を竦めて、チラチラと俺を見ては物言いたげにしている。



「どがんした?俺は明日美が仕事続けたかなら反対せんけど」



「えっ、あ、そう?ありがとう。……っていうか、そうじゃなくて。私まだしばらくは帰って来れんとやった。あんまり嬉しすぎて忘れるとこやったけど」



帰って来れんだって?

今日帰ってきたばかりじゃないか。

まだもじもじしている明日美を見つめながら、さっき感じた違和感を思い出した。



「なあ明日美。出張帰りにしては荷物の少なかった気のするけど、コインロッカーに忘れてきたりしとらんか?」



いや、待てよ。

そう言えば一週間前に駅までおくっていった時もそうだったんじゃないか。

あの時はいっぱいいっぱいで、そんなことに気付く余裕もなかった。



「大丈夫。だって私また福岡に戻らんばけん。会議に参加するための一時的な帰崎なんだ……」




一時的な…………?



「お前、福岡行く前俺に『一週間くらい』って言うたよな。そうは言うても帰ってくる日の分からんかったし、待ちきれずに今日福岡まで行くつもりやったけど。瀬名から今日帰るって聞いたけど、一時的な帰崎とは聞いとらんし」



「ごめん友也。本当はこがん早う帰るつもりなかったと。だって友也と未来に笑って会う自信なかったし……。赤ちゃんのことも祝福なんかできんと思ったし」



ああ、やっぱり明日美は俺から離れる覚悟で福岡へ旅立ったんだな。

とんでもない誤解を与え、酷く傷つけた罪は重い。



「青柳さんの妊娠のこと、誤解させたとも全ては俺の責任。辛い思いさせて悪かったな。俺は明日美以外は有り得んし、これまでもこれからも俺は明日美だけのものやけん、信じてくれんか?」



青柳さんと田代先輩には散々振り回されてきたけど、あの二人はできちゃった結婚で落ち着くだろう。

明日美も誤解を解いてくれただろうし、これでみんな丸く収まってくれたらいい。



「ちょっと前まではどん底で辛かったけど、今は友也と一緒にいられて幸せだよ。だからこれからも……信じてる。でもしばらくは、遠恋だね」




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