目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。

次の日の中華料理屋では、チャーハンの話で盛り上がる。
大学時代、教授の家に押し掛けたことがあり、その時、百合があり合わせで作ってくれたチャーハンを思い出して話題を振ってみた。

「そういえば昔作ってもらったよな？あれ、うまかったよ！！」

すると、彼女は恥ずかしそうに頬を染めた。
ここ最近、昔の話になっても、百合は前ほど辛そうな顔をしなくなった。
百合は百合で気持ちの整理をつけているのかもしれないなと、俺は心底ほっとした。
一番最初に食事に行った時の百合は、悲しくて堪らないという胸の内を洩らしていた。
だがこうして、教授を知っている者同士が寄り添い、偲び、語り、笑い合うということがきっとプラスに働いているのだろう。
忘れる為じゃない。
これは思い出に変えていくプロセスだ。
そのプロセスを百合と分かち合えていることに感動すら覚えながら、俺は頬を染める彼女を眺めていた。