目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
当初、計画から三国さんに因って省かれたフレンチレストラン。
そこは町から少し外れにある、隠れ家的な場所である。
予約がないと絶対に入れない。
そして、誰かの紹介がないと場所すら知らされないという特別な所だ。
いつだったか、取引のある病院の院長に紹介されてから、この素朴な雰囲気が気に入り、たまに一人で来ていたりした。
笙子を連れてくる、という発想がなかったのは、きっとこうなることをどこかで予感していたのだ。
そして、その予感を信じて良かったと今心から思っている。

「い、一色さん……こんな高そうな店大丈夫ですか?」

奥まった2人用のテーブルに案内され、席についた百合は開口一番そう言った。

「大丈夫だよ?心配しないで」

「え……でも……」

百合はキョロキョロと辺りを見回した。
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