目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「すごくきれいね……この光の具合なんてよく表現出来ましたね!?」

「そうだろ?うんうん。百合さんは良くわかってる。蓮司は芸術に興味ないからなー。つまんねーやつだ」

柾さんは蓮司さんにチラリと目を向けた。

「悪かったな……あ、それでまだあるんだろ?届け物」

「ん、あっ、そーだ!そーだ!」

蓮司さんの問いに大袈裟に答えた柾さんが、肩にかけた大きな鞄をテーブルに置いた。
そして、中から白いたとう紙を2つ出すと私に手渡す。

「街の呉服屋さんから頼まれたやつ。浴衣が出来たからもってけーってさ。全く俺は配達係じゃねーつーの!」

「浴衣!?」

私は勢い良く蓮司さんを振り返る。
すると、彼はいたずらっ子のようにニヤリと笑った。

「どうして浴衣?お祭り?」

「いや、実は今日、そこの海岸で花火があるんだ」

蓮司さんはツカツカと窓に歩み寄りカーテンを開けると、リビングの大きな窓から見える海を指差した。
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