目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「いや、知らなかったと思う。俺は、家でそういうことをしなかったし、君にも言ったことはなかった……」

「ふぅん……そう……」

見るからに元気がなくなってしまった彼を見て、私は話題を変えようと試みた。

「ね、入らない?中がどうなってるか興味あるんだけど」

「ああ、そうだね、こっちが玄関だよ」

大きな保冷バックと、私の荷物を持って、彼は前を歩きだした。
車から玄関までにも低く白い壁があり、所々が花壇のようになっていて、紫の小さい花が植えられている。
この外構は好きだな、と本能的に思った。
もし誰かが考えてこの花を選び植えたのだとしたら、きっと私と気が合うに違いない。
そう考えながら、ゆっくりと歩く彼を追い玄関までたどり着いた。
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