目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
悪びれもせず、蓮司さんは飄々と言った。
彼には半年以上でも、今の私には夫婦歴2日目なんですけど、それ、わかってます?

「恥ずかしいんですってば!大体、そ、そういうの、セクハラ?じゃない!?」

「そうだーセクハラだー」

柾さんが支援をしてくれる。
だけど、全然心が籠ってない。
ただ、蓮司さんに文句がいいたいだけのような気がするよ……。

「セクハラ……えー、百合は嫌なの?」

蓮司さんは、背を屈めてこっちを覗き込む。
少しシュンとしているその姿は、まるで怒られた大型犬のよう。

「嫌というか、恥ずかしいからあんまり言わないでってこと!」

「うーん……仕方ないね。百合がそこまで言うなら、人前では(出来るだけ)気を付けるよ」

人前では……というのが気になりますが、取りあえずは良しとしましょう!
私はほっとして、受け取ったたとう紙の中身を開けた。
そこには、紺の総絞りで華やかに百合の花があしらわれた浴衣が丁寧に畳まれてる。
浴衣の柄の定番といえば、季節柄、朝顔とかひまわりとかが多くて、百合はそうは見ない。
わざわざ探したのかと蓮司さんに尋ねると、恐ろしい答えが帰ってきた。
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