目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「探してない。職人の一点物だよ」

「ん?」

聞き違いだろうか?
一点物と聞こえたような。

「デザインからお願いしたんだ。世界に一つだけの百合の浴衣だよ」

良い笑顔で笑う、蓮司さんの前で私は軽く引いた。
浴衣とは言え、デザインから発注するとそれなりのお値段がするのでは?
しかも、総絞り、桁が一つは増えそうね……。

「あと、俺の浴衣も百合を入れてもらっている」

自慢げな蓮司さんは、私の浴衣の下にあった自分の物を引っ張り出して見せた。
それもグレーの総絞りで、袖と裾に、わかるかわからないくらいの百合の 模様が小さく入っている。

「ら、ラブラブだな……悪いけど、少し引く……」

柾さんが気持ち悪そうに私達を見た。
やめて、同類のように見ないで?頼むから。
と、切ない表情で首を振ると、ああ!と柾さんは頷き「君も大変だな」と顔で語った。
< 163 / 285 >

この作品をシェア

pagetop