目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
微妙な表情の柾さんと私の前で、一際嬉しそうな蓮司さん……。
そんなに嬉しそうにされると、もう何も言えない。
男の人にとって、お揃いってそんなに意味のあるもの?
どちらかと言うと、女性の方が欲しがりそうなんだけど。

「おっと、あと一時間しかないぞ?早く着替えとかないと!百合、着付けは覚えてる?」

浴衣を手に、浮わついていた蓮司さんは突然こちらを振り返った。

「着付け……あー、うん。たぶんいけると思う。そういう、日常のことは忘れてないから」

「良し!!じゃあ……とりあえず柾は帰れ」

酷い……。
届けて貰っておいて、次は帰れとか……。
蓮司さんは良い笑顔で、柾さんに手を振っている。
私が意見しようとすると、柾さんはやれやれと肩を竦め、背を向けた。
そして、玄関へと歩きながら大きな声で言った。

「言われなくても帰るよ。これ以上当てられるのは勘弁してもらいたいからね。じゃあ、あとはごゆっくりー」

「あっ、柾さん。どうもありがとう!!」

蓮司さんが言わないので、私が言っておいた!
もう!ちゃんとお礼はいいましょうね!

「ああ。いいんだよ。こいつは昔からこんなんだから。慣れてるよ」

柾さんはそう言って、爽やかに去っていった。
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