目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「だが……本当に隠そうとしたときは……全然わからなかった」

「蓮司さん??」

彼は自信満々の表情から、一転、自信無さげな顔になった。
その落差に驚き、更に言葉の意味がわからず困惑する。
「本当に隠そうと……」とはどういうこと?
記憶を失くす前、私は蓮司さんに何かを隠していた?
何を隠していたのか。
考え始めると、途端にズキッと頭が痛んだ。

「い、痛っ……」

思わずこめかみを押さえた。

「百合!?」

浴衣を放り出した蓮司さんが慌てて駆け寄り、心配そうに覗き込む。
それから肩を抱かれ、ゆっくりソファーに座らされると彼が申し訳なさそうに呟いた。

「無理しすぎたかな?もう休む?」

「ん……ううん、大丈夫。一瞬だから」

頭痛は本当に一瞬だけだった。
他のことを思い出そうとしても、こんなことにならないのに、どうして?
その疑問の答えは、自身で簡単に出すことが出来た。
隠していた内容と、記憶を失くしたことに関係がある。
それは、蓮司さんと私に関係があって、更に私はそれを後ろめたく思ってる?ということではないだろうか?
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