目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「本当に大丈夫?」

蓮司さんの優しい声に、現実に引き戻される。
贖罪と後悔と心配が混在したような表情の彼は、私を気遣ってくれるけど自分が倒れそうなことに気付いていない。
これ以上、心配かけちゃいけない、と、なぜか強く思った。

「大丈夫!浴衣着よ?まずは、蓮司さんからね!」

「ああ、うん」

まだ心配そうな彼に、私は心から笑って見せた。
そうだ。
蓮司さんの笑顔を、いつも守りたいと思っていた。
心配かけたくないと思っていた。
失くしたはずの記憶の中から、そんな優しい想いだけが甦る。
< 167 / 285 >

この作品をシェア

pagetop