目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「実は、私の初恋は一色さんなんです」

「は??」

聞いた言葉を理解するのに暫く時間がかかった。
その為、自分でも恥ずかしいくらい間抜けな声が出た。
そんな俺を百合はおかしそうに眺めながら、話を続ける。

「あの頃、父の生徒として家にやって来ていた一色さんはとても素敵でしたから。でも、私とは別の世界の人だとも思っていました。いつも、綺麗な彼女さんが側にいましたし……」

「あ、それは……」

口を挟もうとした俺に向かって、百合が掌を向けた。
どうやら最後まで言わせろ、ということらしい。
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