目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
桜が舞ういい季節に、百合は白無垢を着て、世界で一番美しい花嫁になった。
真っ白な打掛に、真っ白な振袖。
ゆったりとレトロに結った髪には、百合の花を模した飾りを付けている。
その目を見張る美しさに、俺は終始彼女に釘付けになった。
「蓮司さん……何を着ても似合いますね!素敵です!」
と、百合は言う。
俺は普通の紋付き袴だが、それをとても気に入ったらしく、しきりに誉めてくれる。
だが、そう言う自分の方が輝いていることにどうして気づかないんだろう。
と、俺はいつも不思議に思う。
心優しく、可愛い百合は、もっと自分に自信を持つべきだと思う。
そのことをすぐには無理でも、これから時間をかけて、俺が教えてあげないといけない。
だって彼女は、この世で一番大切な妻なんだから。
< 199 / 285 >

この作品をシェア

pagetop