目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。

二宮

花火の余韻に浸っていた体は、次の日の昼前まで私を眠りから目覚めさせなかった。
心配した蓮司さんが、一度様子を見に来たのは覚えているけど、何の会話をしたのかはあまり覚えていない。
「大丈夫。でも、もう少し寝る」とか言ったような気はする……。
そして、それから二度寝してしまったのは間違いない。
時計を見ると、もう10時半を過ぎていて、私は慌てて身支度をし階下に降りた。

「おはよう。大丈夫?」

リビングのソファーから、心配そうな蓮司さんがすぐに駆け寄ってきた。

「ごめんなさい。すごく眠くて。体はどこも悪くないから大丈夫よ」

そう言って視線を滑らせると、蓮司さんの肩越しに何かが見えた。
後ろのソファーに誰かが座っている?
仕事で三国さんが来ているのかな?
と思いひょいと覗くと、そこには知らない男の人が座っていた。

「こんにちは。百合ちゃん」

短く刈り込まれた髪に、はっきりとした口調。
黒っぽいグレーのスーツに、黒のネクタイ。
夏なのに涼しい顔をして暑苦しいスーツを着こなす男は、私の名前を呼んで微笑んだ。
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