目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「百合。そんなに苛めてやるなよ。二宮は刑事は失格だが、人間は合格だよ?」

刑事失格はダメなんじゃない?
そう心の中でツッコミをいれておく。
だけど、人間は合格だということは、蓮司さんは二宮さんを信用しているということよね。

「お前……オレの刑事適正を全否定しやがって。わりと優秀なんだぞ?ま、人柄を認めてくれてどーもな!」

「そういう単純な所が二宮のいいところだ」

「単純は余計だ」

2人は言い合いながらも楽しそうだ。
二宮さんは、蓮司さんの肩を小突き、それを蓮司さんは軽くいなす。
彼らのゼミ時代を思い出せない私だけど、たぶんこんな感じの関係だったのだと思う。
蓮司さんも、二宮さんも、お互いの思い出で繋がっている。
羨ましいな、ふとそう思った。
私は、思い出の中にある人を忘れてしまっている。
大事に思ってくれる人や、心配してくれる人。
大切な人を思い出せずにいる。

「百合?」

不意に蓮司さんに声をかけられた。
いけない、またぼーっとしてたんだ。
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