目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。

「教授のお嬢さん？こんにちは、俺、一色といいます。お邪魔します」

低い声に私は我に帰った。
その声は「例の男性」で、彼は冷酷な印象から程遠い、優しい顔をして微笑んだ。
一色さんと言うのか……なんかもう名前も格好いい気がするわ。

「は、はい。えーと、百合です。初めまして！皆さん、どうぞお上がり下さい」

慌てて来客用のスリッパを出そうとして、数が足りないことに気付いた。
恥ずかしい……
俯いて困っていた私を見て、また同じ声が掛けられた。

「大丈夫だよ。このままで」

見上げると、さっきの彼が笑っている。
バカにしたような笑いではなく、身内を見るような暖かい眼差しに、私は安心して頷いた。
そしてやっぱり、このギャップがいいんだわ！と自身の考えを肯定した。