目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「おっ!スイカ!俺好きなんだよね?」

一色さんだ。驚いて私はすこし飛び上がった。

「あ、ごめん。ビックリした?」

「いっ、いえ……」

本当はめちゃくちゃビックリしました、と言えなかったのは、整った顔が間近に迫っていたからだ。
彼は待ちきれないらしく、わたしの持ったスイカのお盆を穴が開くくらい見つめている。

「あの、どうぞ?」

「え、いいの?」

いいもなにも……そんな欲しそうな顔をしている人にお預けなんてしません。

「はい。きっと甘くて美味しいはずです」

私の言葉に、一色さんは子供のような顔をして笑い、スイカを一切れ手に取った。
そして遠慮なくパクリと一口。
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