目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「うっま!!これ、今まで生きてきたなかで一番旨いよ!!」

そんな、大袈裟な。
とはいえ、そこまで言われると私が作ったわけでもないのに照れてしまう。
一色さんは、シャリシャリといい音をさせながら、夢中になってスイカを頬張った。

「ふふっ、まだ沢山ありますから。言ってくださいね?」

「うんっ!ありがとう!」

その時もう、彼のスイカは皮だけになっていて、口の端には一粒だけ種がついていた。
完璧御曹司のこんな姿、きっと知ってるのは私だけ。
そう思うと嬉しさがこみ上げ、歌い出したいような衝動にかられた。
どうしたんだろう。
これ、一体なんだろう。
ふわふわと感じる高揚感と、少しだけ切ないような気持ち。

「もう一つ、もらうね!」

そう言った一色さんの笑顔を見たときの、跳ねる鼓動とお臍の辺りの疼き。
……あ、そうか。
私、一色さんのこと好きなのかもしれない。
世の女性達が、彼に惹かれ憧れるように、私もきっと。
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