目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
蓮司さん、大丈夫かな……。
疲れたなんて一言も言わないけど、そんな人だから余計に心配になる。
データがライバル社に流れる可能性があるんだから、疲れるのは当然だけど。
会社の未来にも関わることだし、何千人もの人の生活も支えているんだから……。

取りあえず二人分の夕食の準備をして、一人分はいつでも食べられるようにしておく。
だけど、12時過ぎても蓮司さんは帰ってこなかった。
遅くなるから先に寝てて?と言われたけど、とてもじゃないけど、そんなこと出来ない。
私はリビングで帰りを待つことにした。
結局その夜、彼は帰って来ず、気付いたら私もリビングのソファーでうたた寝をしており、時計を見るともう朝の7時を過ぎていた。
寝てる間に連絡があったかとスマホをチェックしてみたけど、着信はない。
きっとデータの行方と犯人を血眼になって探しているんだ。
皆が頑張っているのに、私は犯人を知っていてそれを言えないなんて……。
会社の為、蓮司さんの為、皆の為なんだと思っていても、嘘をつくという行為が、酷く罪の意識を起こさせた。
そもそも、器用に嘘をつくなんて、バカ正直に出来ている私には、難度の高いミッション。
それに、嘘をついて彼女に会いに行っても、簡単にデータを渡してくれるなんて思えない。
無理難題を言われたりしたらと思うと、もう気分が悪くて吐きそうになる。
それでも、なんとか頑張ろうと思えるのは、蓮司さん……私が大好きな人の為だ。
彼をなんとかして助けたい、役に立ちたい、その思いしかなかった。
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