目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
既に出かける用意は出来ているし、意気込みも万全だ。
マンションからベイサイドホテル迄は車なら約30分。
それでも、公共機関を乗り継いで行くので、一時間の余裕はちょうどいい。
身の回りのものを詰めた小さめのバッグを持ち、私は足早にマンションを出た。

マンションから駅まで歩き、そこから電車に乗り3駅目で降りる。
そして、今度はバスに乗り終点の港まで行く。
降りた途端、海風が湿り気を運んできた。
季節は梅雨が明けたばかり。
完全な夏の気配にはまだ遠く、じめっとした風で薄手のワンピースの袖が肌にはりついて不快だった。
港のバスの終点から、暫く海沿いを歩くと、目の前に歩道橋が見えた。
待ち合わせの場所を前に、私は少し震えている。
武者震いか、怖さの為か。
きっとその両方だと思うけど、一緒に高まってくる動悸の方が酷くて、良くわからなくなっていた。
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