目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「ううん。蓮司さんのせいじゃない。全部私が決めてしたことだもの」

そう。
この結果は誰のせいでもない。
役に立ちたいと自分で決めたこと。
結局こうして迷惑をかけてしまったけど……ね。

「百合……君にあの女、相島笙子のことをちゃんと言っていなかったことを後悔してる。君のことを愛するようになるまで、俺は愛なんて良くわからない人間だった。付き合う女性なんて、誰でもいい……そんな人間だったんだよ……」

訥々と言いながら俯く蓮司さんの声は、少し震えていた。
これを聞いて私がどう思うか……それを気にしているような素振りが見える。
私は静かに耳を傾けた。

「……相島笙子のことを、愛していた訳じゃない。単に、煩わしくなく仕事の出来る人をパートナーに選ぶのが合理的だと思っていたんだ。単なる契約だった」
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