目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「こんな俺をどう思う?……もう、愛想が尽きたかな?」

口の端を上げて、自虐的に笑った蓮司さんの頬を……私はつねりあげた。

「いでっ……」

小さく叫び、変な顔になった彼を見て、おかしくなって笑った。
そして、言った。

「私、蓮司さんに合理的で打算的な所があるって気付いてましたよ?きっと最初に見た時から」

「ふぇ??」

小さく呟いた彼の顔は更におかしくなり、私は笑いを堪えながら続けた。

「今更言われたって、だから?って感じ。本当は情の厚い人だっていうのもわかってます!それに、この件があったからこそ……確信したものもあるっていうか……」

「確信したもの?」

私はゆっくりとつねっていた彼の頬を離した。
その後はほんのり赤くなっている。
申し訳なくなって、優しく擦ると、上目遣いに見た蓮司さんと目が合った。

「うん。彼女とのやり取りの中で、私、試されてるなって思うことがあって……昔のコンプレックスとかいろいろね。でも、それらはもうとっくに、過去のものになってた。今あったのは、蓮司さん、あなたを信じていて、大好きだっていう思い……だけ」
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