目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
思い出した今も、記憶を失くす前も、いつだって、蓮司さんを信じてた。
悪意の揺さぶりになんて動じない思いは、彼と過ごす中でとっくに生まれていたんだ。

「俺のこと……これからも……」

断片的な言葉の続きは言わなくても知っていて……返す言葉も決まっている。

「はい。もちろん、大好き」

笑う私の体は、隙間なんてどこにもないくらい、一瞬で蓮司さんに埋め尽くされた。
彼の熱い体は、冷えていた私の体を春風のように包み込み満たしていく。
愛する人に愛される幸せを、今、私は全身全霊で感じている……。

そんな幸せの中、私はあることを思い出し大声を出した。

「蓮司さん!データは!データはどうなりました!?会社の……」

忘れていた!
会社の未来を左右する大事なことなのに!

「あ、ああ!心配ないよ。歩道橋から落ちた君が大切に抱えんでいたから」

「本当!?良かった……」

ほっとしたら全身の力が抜けた。
でもそんな私とは正反対に、蓮司さんは眉を寄せて怒っているような顔になる。
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