目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「いや、初めましてだよ?会ったことはない!まぁ、何て言うか、見たことあっただけ?」

「見たこと??」

訳がわからなくなり、蓮司さんに助けを求めた。
彼はそれを素早く察知して、柾さんの言葉を補完した。

「実は写真をもとに絵を書いて貰ったんだよ。だから柾は見たことあるって言ったんだ」

「なるほど……」

そう答えながら、私はあることに気付いた。
昔撮った写真とか見れば、もっと早く記憶が戻るんじゃないかな?って。

「ねぇ、写真を見れば何か思い出すかもよ?」

「……ああ、確かにそうなんだけど、すまない、全部自宅にあるんだ……でも一枚だけここにあるよ」

蓮司さんが柾さんに目配せした。
すると、柾さんが奥へと消え、次に出てきた時にはそこそこ大きいサイズのキャンバスを抱えて帰ってきた。
そうして裏返していたキャンバスを、私の目の前でくるりと反転させる。

「これ……」

「どう?かな?覚えてはいないか?」

不安そうな蓮司さんを安心させることは出来なかった。
覚えてはいない……。
でも、単純にその絵が素晴らしいと思った。
描かれた風景はサントリーニ島で、私はどうやらこの島をこよなく愛していたらしい……からだ。

「ごめん、覚えてない。でも、この絵はすごく好き。この島、大好きだから……」
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