目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「三国さん……これは必要ない。信じるよ」

「そうですか。では、早めに相島さんをなんとかして下さい。今、被害に合っているのは、常務秘書の浅岡さんですから」

「浅岡さん!?」

「そうです。若い彼女が社長と話すのが気に入らないんでしょうね?」

「バカなことを……」

頭を抱えた俺に、また淡々と三国さんが言った。

「まぁ、お二人で良く話し合って解決して下さい。ですが、相島さんが会社に残るのであれば、私や被害に合った社員は黙ってはいませんよ?」

「わかった……なんとかしよう……」

三国さんはやると言ったらやる。
曲がったことが嫌いで、周囲の意見を良く聞いて、正しい判断をする。
先代(父親)の信頼を一番得ていたのも実際は彼女だった。
だが……どう解決すればいいのか。
三国さんの言うように、結婚して家に閉じ込めるか……と考えたが、もうそれも違うような気がしていた。
そもそも、俺が提案にのったのは、そつなく社長夫人をこなすという彼女を信じたからだ。
しかし、今、笙子は会社に不利益を与える存在に成り果てた。
これは約束違反ですぐに関係を解消した方がいい。
そう思ったが、2年……そんなに短い時間じゃない。
その間、付き合っていた女をそんなに簡単に捨てられない。
愛情とは違うが、何かしらの情が芽生えている。
そんな相手に、今からしようとしていることは非情だということもわかっていた。
混乱した俺が大きくため息をつくと、三国さんが止めを刺すように言った。
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