目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「社長が何をお悩みかわかりませんが、一つ報告を致します」

「……報告?」

その言葉に頭を上げて、三国さんを見た。

「相島さんは、一色製薬に入った当初から、ずっと専務の愛人です」

「は……な、おい……それは……」

「本当ですよ?私が何年秘書課にいると?横の繋がり、縦の繋がり、何処にでも人の目はありますからね」

「バカな……じゃあ笙子はどうして……」

「さぁ、そこまでは。私は彼女のような発想が出来ないもので……ですが、社長も相島さんを利用したのでしょう?どっちもどっちかと」

三国さんは表情を変えずに言った。
こうまで言い切られるといっそ清々しいな。
下手に同情されるよりずっといい。

「三国さん、ありがとう。手遅れになる前で良かった」

「どういたしまして。より良い判断を期待しております」

そこで、三国さんは初めてにっこり笑って頭を下げ、会社に帰るまで資料のチェックに精を出していた。
俺は、電池残量50%をきったスマホを眺めながら思案した。
どういって笙子と関係を切ろうか、と。
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