目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「記憶に関しては急ぐことはない。それよりも、他に悪いところがないか、ちゃんとみて貰わないと。命に関わる損傷があったら大変だからね。それで問題なかったら、静かな所でゆっくり静養しよう。そうすれば記憶も思い出せるよ」
彼は一言一言を噛み締めるように、ゆっくりと言った。
まだ他人でしかない自分に警戒心を抱かせないようにか、若しくは、私を不安にさせない為か。
人となりがわからない今は、それがどちらかわからない。
でも、私が彼の妻であったことは、間違いないと思う。
一色製薬の社長が、免許証を偽造してまで地味で記憶のない女を騙そうとすることは恐らくない。
もし名刺の肩書が嘘だったとしても、調べればすぐ嘘だとばれるし、メリットも何もない。
更に私は自分の手に視線を落とした。
その左手の薬指、そこには小さな赤い石が埋め込まれた結婚指輪がある。
つまり、私は結婚していて相手は彼なのだ。
少し状況が見えてきた私は、この正体不明(まだ私にとっては)の夫の言に頼る他ない、と感じていた。
それは「この世にもう血縁者はいない」と漠然と感じた寂しさのせいである。
彼は一言一言を噛み締めるように、ゆっくりと言った。
まだ他人でしかない自分に警戒心を抱かせないようにか、若しくは、私を不安にさせない為か。
人となりがわからない今は、それがどちらかわからない。
でも、私が彼の妻であったことは、間違いないと思う。
一色製薬の社長が、免許証を偽造してまで地味で記憶のない女を騙そうとすることは恐らくない。
もし名刺の肩書が嘘だったとしても、調べればすぐ嘘だとばれるし、メリットも何もない。
更に私は自分の手に視線を落とした。
その左手の薬指、そこには小さな赤い石が埋め込まれた結婚指輪がある。
つまり、私は結婚していて相手は彼なのだ。
少し状況が見えてきた私は、この正体不明(まだ私にとっては)の夫の言に頼る他ない、と感じていた。
それは「この世にもう血縁者はいない」と漠然と感じた寂しさのせいである。