目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
あまりにも真剣な顔で、蓮司さんが言うので、もうそれが冗談だなんて思えなかった。
どうしよう!
思い出せなかったら、一生こうやって、食事を用意されて甘やかされてダメ人間にされるのかな?
私は食べようとしていた目玉焼きを前に、ワナワナと震えた。
ナイフとフォークがぷるぷると震え、オレンジジュースも揺れる。

「ぶっ」

…………ぶっ?
おかしな音がして見上げると、蓮司さんがもう堪らないという顔をして口を押さえていた。
こ、これは……また、私。
からかわれたのではなかろうか?

「蓮司さん?また、私で遊んだ?」

少し怒ったように言ってやる!!
当然よね!

「ごめん」

そう謝るけど、顔が笑っている。
つまり……反省してない。

「私をからかうのそんなに楽しい?」

「うーん。からかうのが楽しいんじゃなくて、百合の表情がコロコロ変わるのが楽しい。笑ったり、怒ったり……いろんな君を見てるのが楽しいんだよ」

「そんなに私の百面相が好きだとは……」

なんとなくそんな気はしてた。
蓮司さんは、ずっと私の顔を見てたから。
きっと、百面相が面白かったんだ。

「好きだよ」

「百面相がね?」

「それも、全部。百合の全部が……好きだよ」
< 62 / 285 >

この作品をシェア

pagetop