目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
……何だろうこれ?
実はテレビのドッキリ企画でーす、って向こうの扉から誰か出てくるんじゃないでしょうね?
言われた言葉に面食らうより先に、私はキョロキョロと隠しカメラを探した。
ついさっき、蓮司さんが言った言葉を真に受けるよりは、隠しカメラを探す方がより現実的に思えたからだ。

「百合……何してるんだ?」

あまりの挙動不審さに、流石の蓮司さんも少し引き気味だ。

「隠しカメラを探してます!!」

と言いながら、テーブルの下を覗く。

「隠しカメラ……何で!?」

「……いえちょっと、現実と虚構の区別がつかなくてテンパってるというか……なんというか……」

「現実と虚構……それ、さっき俺が言ったことに関係してる?」

ぐっ。
関係してるも何も、それが全てです。
口ごもった私を見て、蓮司さんは何かを確信した。
そして、テーブルを人差し指でトントンと叩き、私の注意を引くと椅子に深く腰かけ言った。
< 63 / 285 >

この作品をシェア

pagetop