目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「はい、どうぞ、三国さん」

「ありがとうございます」

リビングのソファに座る彼女の前にティーカップを置き、私もその横に座る。
ここに来て漸く働くことが出来たと、私は感無量だ。
お茶を淹れるだけなんだけど、するとしないとでは大きな差がある。
そう!気分的にっ!
働いてないと、もう落ち着かない。
悲しいかな、そんな性分なんだろう。

「うん。美味しい。奥様の淹れたお茶はいつも絶品ですね?」

「いつも?私、三国さんにお茶を淹れたことが?」

「ええ!ご自宅にも何度かお邪魔したことがあります。その度にいろいろご馳走になりまして」

三国さんはキリリとメガネの端を持ち上げた。
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