目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「一色か?」

懐かしく無骨な声がした。

「ああ、久しぶり。二宮」

「変わりないか」

「ん、まぁな」

いや、本当は身の回りが結構大変なことになっているんだが。
だが、そんな格好悪いことを敢えて言う必要もない。

「それは、なによりだな」

「……ああ。で、何かあったか?」

本来ならもう少し昔話に花を咲かせるところだが、本題が気になる。
片付けなければならない最重要案件の上に厄介ごとを背負い込むのだけは勘弁だ。

「……薬学部の八神教授、いたろ?」

「ん、ああ!教授がどうした?」
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