頑張る
白い天井が見える。何度か見たことのある景色に、状況理解は早い。とにかく帰らなければと思い起き上がると
「起きたのか?」
誰かがいたことに気がつかなくて驚いた。
「れん…時谷先輩、助けてくれたんですか?ありがとうございました。ご迷惑をおかけして、すみません。もう帰って頂いて大丈夫です。」
名前を呼ばれるのだって嫌だろう。この間酷い別れ方をしたので、この空間が気まずい。正直、早く帰って欲しい。
「あー、いや大丈夫。てか、、ごめん。この前、、ひどい事言った。」
「気にしてないので大丈夫です。あれは、忘れてください。」
そうは言っても軽くトラウマである。昔の蓮と別人のようで、感覚としてはちょっとした知り合いレベルのコミュニケーションをとってしまう。自分の返答がさらに空気重くしている自覚はあった。
「あっ、そういえば早く帰らないと」
「いや、たぶんお前、今日入院だと思うよ」
「えっ⁈なんで⁈…ですか?」
「お前、知らなかったっけ?ここ、俺の親の病院だから、「久しぶりー澪ちゃん!」」
「えー!まなみさん⁈」
「おい!母さん、急に出てくんな!」
「あら、お邪魔だった?」
「そういう意味じゃねーし!」
相変わらずのテンションの高さに安心する。
「あ!澪ちゃん笑ったー!」
「えっ?」
「澪ちゃん、疲れてるみたいだったから。喘息もたぶん、疲労からくるものかな。蓮から少しだけ、澪ちゃんのこと聞いたのよ。何かあったらいつでも言ってね!抱え込まずに。それと、今日は入院よ!まだ苦しいでしょ」
呼吸が苦しいのは図星だけれど、心は随分と軽くなった。
「まなみさんありがとう。久しぶりに会えて嬉しかった」
「何言ってんの〜お別れじゃないんだから。じゃ!また仕事戻るから、何かあったらナースコール押してね」
ガラガラ
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